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Mana Beentjes

いつも ずっと すぐそばに




Voor altijd dichtbij

Elvis Peeters  絵 Yule Hermans 発行日: 2022 年 11 月 10 日


〈あらすじ〉

ママの死と向き合う過程で、喪失感を抱きしめることから命の真意を見つける勇ましい少女ユールの物語り。


ママ亡き今も家の中にこぼれ落ちたままになっているママの面影の点と点をなぞって星座を創る。ママがユールのそばかすを指でつなぎ星座を創ったあの時の記憶をなぞるように。


ママを失ったユールの世界は冷たくて脆い氷の世界へと一変した。ベッドもぬいぐるみも壁もテーブルも透明な氷に変わってしまった。温もりのない世界で、パパとオトウトも冷たく脆い氷になった。彼らにはひびが入り、いまにも壊れてしまいそうだった。


自分の顔を鏡に写したユール。ママから譲り受けたそばかすを見て、ママがすぐそばにいることに気づく。顔の上でこぐま座とおおぐま座がユールに微笑みかける。ユールもそれに応えるようにして笑顔を作った。そんなユールを窓の外から太陽が照らしていた。


Voor altijd dichtbij

 

私はユールの強い心に触れて涙がでる。何度も何度も感動する。


幼いユールにとってママを失うことは、世界を失うことと同じことではないだろうか?それでもユールは大きな喪失感と全てが変わってしまった世界への恐怖から逃げない。自分なりの方法を見つけ、自分の中にいる見えない怪物のような感情と調和していくのだ。ユールは周囲の様子も冷静に観察している、特に大人たちの表情を。それはそれは静かな描写なのだけど、こんな時の大人の感情や行動がダイナミックに伝わってくる。これらを描写する言葉が確かにユールという少女から発せられているからだ。


この絵本はユールの喪失感と孤独感で大きく膨らんでいる。読み終えて本を閉じればユールの涙が溢れ出してくるのではないかと心配になるくらいに。だからなのか、命の温もりと安心感が後から後から押し寄せてきて、泣いているのはユールではなくて自分だったと気づくことになる。


表紙につられて手に取ったこの絵本の作者はベルギー人作家のエルビス ピータースと、同じくベルギー人イラストレーターのユール ヘルマンス。表紙につられて手に取ったとはいえ、私の目はタイトルであるVoor altijd dichtbijを見ていたに違いない。私はこのアルファベットの並びに詰め寄られたかのような緊迫感を感じたのだ。同じ瞬間、ユールが描いたイラストに飲み込まれてもいた。絵本を開くと、私の体は一瞬のうちに静けさとなった。私はときどき読むのをやめて絵本の上の空間に目を泳がせた。そこに何かが漂っている気がしてならなかったから。


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